前回の記事では僕の作品を作る制作環境、作詞について紹介しましたが、今回は僕のAIでの作曲について触れたいと思います。(音楽グループでの作品は基本オリジナルなので以下の方法とは違います)
AI作曲は運任せの『ガチャ』なのか?
AI作曲はただプロンプトを打ち込むだけの『ガチャ』だと思われがちです。しかし、僕はそうは思いません。AIを運任せにしないために僕が意識しているのは、「プロンプトの工夫」と「土台作り」です。今回の記事では、この2つの内容について紹介します。
1. AIを操るプロンプト術
個人で作るほとんどの作曲にはSunoAIというシステムを使っています。 過去の作品にはUdio等いろんなシステムを使ってきましたが、一番しっくりくるのがSunoでした。
Sunoに歌詞を貼り付けて、どんな感じの曲にするのかをプロンプトを打ち込みます。
僕は多少こだわりがあるので、納得できる音楽が出るまで何度も出力しなおします。まるで『ガチャ』を回すように数をこなしますが、極力単なる運任せにしたくないので、「プロンプトの工夫」や、後述する「土台作り」で理想の曲に近づけます。
完全運任せの『ガチャ』ではなく、狙って『ガチャ』を回すようなイメージです。
この工程では一曲つくるのに10回~30回くらい試行錯誤します。うまくいかないときは100回くらい作り直した事もあります。
Sunoは数ヶ月に一回アップデートをしており、バージョンが上がるたびに雰囲気も変わるし、プロンプト単位で出力される内容も変わるので、かなり四苦八苦しています。
また、発音が潰れてたり、歌詞通り歌ってくれないことが結構あるのですが、そのへんは最終的にDAWで編集するので、全体的によければ採用します。
プロンプトの具体例:『詞っぽい歌詞』と『詩っぽい歌詞』
まず歌詞のテイストからイメージ出来る曲の雰囲気を想像します。
例えばですが、とても暗い感じの歌詞を作ったとして、それはダークなイメージがでるようにしよう。もしくは、歌詞が暗いから曲調は明るくてアップテンポな感じにしよう。と決めます。
あとは歌詞をどんな感じで作っているかで僕の作り方はちょっと変わるので、ケース別で紹介します。
歌詞を歌の詞っぽく作っている場合
これはどういうことかというと、あらかじめAメロ、Bメロ、サビなどの音楽構成を決めており、文字数もある程度合わせて作っている場合です。
一例ですが、こういう感じで歌詞を作っています。
(Verse 1)
少し照れた笑顔の僕と
隣で明るく笑う君の
笑い声が重なる毎日
肩を並べいつの間にか歩いてた
(Pre-Chorus)
二人きりの帰り道とか
カフェで過ごす時間とか
きっと同じ気持ちだって
そう思ってた、疑いもせずに
(Chorus)
事実と解釈はいつも違うの?
同じ景色を見てたはずなのに
君はただの友達だって言う
僕だけ見てた、恋のストーリー
(Verse 2)
何日も過ぎて不安になった
曖昧な距離に痺れ切らして
勇気を出してそっと聞いた
「僕らって付き合ってるよね?」
(Chorus)
事実と解釈はいつも違うの?
同じ時間を重ねてたのに
君の言葉は、ただの友達
僕の想い、どこへ行くの?
(Bridge)
触れた肩は、ただの偶然?
隣にいたのは、たまたま?
言葉にしなきゃわからない
こんなにも近かったのに
(Chorus)
事実と解釈はいつも違うの?
同じ温度を感じてたのに
君の心には別の誰か
僕の気持ちは平行線のまま
(Outro)
どこですれ違ったんだろう?
同じ「好き」でも違う意味
二つの線は交わらない
ピエロみたい、僕の想い
上記の歌詞はまだYoutube等では公開していませんが、近日中に出す予定の歌詞です。
この歌詞では、ひとかたまり大体44文字程度で収まるように文節毎にリズムをイメージして作っています。
こういう作り方をすると、イメージから大きくハズレる事なく曲を出しやすいです。
ですが、プロンプトの相性が悪いと全然しっくりこないっていうパターンもありますので、その場合は[Verse]とか[Chorus]とかの指示を外して出力し直したりと色々試します。
歌詞を歌の詩っぽく作っている場合
さっきの例とは別に、詩やストーリーや流れを意識して作った歌詞の場合ですが、このときはAIが出力してくれる素敵なメロディとの出会いに期待してプロンプトを色々打ち込んだりします。
例えば以下のような歌詞です。
「君が違う知らない男性と幸せになるくらいなら
すべて畢らせたいと思った」
手前勝手な殺人の動機に
僕の腸が煮えくり返る
「無職であることや借金があることが
バレたくなかった」
そんなどうでもいい嘘の為に命が
簡単に潰されるなんてどうかしている
消えない頭のわいた異常者
油汚れのようなしつこさを感じる
超えちゃいけない規律を破った者に
やり直しの機会などいるのか?
被害者に可能な限りの救いを
人の所業を超えた犯罪者に
人権などありはしないだろう
未成年でも初犯であっても
害ある怪物に変化したものに
機会の代わりに一生消えないレッテルを貼る
そんな考えは反省しない者の考え方だろう
反省する気があるのならそれを
評価としてじゃなく
過ちの報いとして生きればいい
平和ボケしたこの世界
徐々に崩れて壊れていく
首をもたげてきた破滅が
少しずつ近づく音が聞こえる
異常者を古い規律で匿う
狂った法律破錠世界
時代は既に変わっているのに
過去の遺物で
人が人を壊していく
これは最近リリースした「犯罪者に人権など」という曲の歌詞です。
みてもらったらわかる通り文字数などバラバラのぐちゃぐちゃです。 これを普通に【j-pop】とかで指定して出すと、ろくな結果になりません。
この歌詞についてはあらかじめ頭の中にイメージしてる物があって、文字数バラバラで構成もバラバラな歌詞にはたいてい【Vocaloid】【fast Singing】【Doujin】みたいな感じのプロンプトをいれて、破綻しにくい曲調を指定します。
ですが、どうしてもうまくいかないことがあるので、そのときは文節や歌詞の内容を調整したりします。
プロンプトのコツ:キーワードを混ぜる
基本的に僕はエレクトロ調(EDM含む)、ロック調、バラード調な曲が出るように作っています。 あと、はいろんな要素を複合させます。
例えば、犯罪者に人権などでは、以下のプロンプトを打ち込んで出力したものを編集しています。
female-voice, k-pop, future bass, fast singing, vocaloid, drumnbass, 808, darksynth
アコースティック系のバラードなどには、Acoustic Guitar とか、piano みたいな入力をしますが、それだけだと僕が思うイケてる雰囲気のものはだされないので、Acid jazz とか Breakbeatとかいろんな属性を混ぜて出力します。
2. SunoAIとの対話:理想の曲を引き当てる
発音や歌詞のズレを許容し、イメージに近づけるコツ
SunoAIは歌詞の内容を踏まえ、良くも悪くも提案を含めた作曲をだしてくるので、悲しい感じの歌詞だといくら明るい感じの曲調にしようと思ってプロンプトを入れても、暗い感じの曲が出力されたりします。
それを踏まえて、まず暗い感じの歌詞で暗い感じの作品を作る時は、歌詞をそのまま打ち込んで、プロンプトに【Minor-key】とか【Dark】というキーワードを入れます。
逆に暗い感じで明るい感じの作品を作りたいときは、先程作った歌詞を全部カタカナにしたり、ひらがなにしてから出力します。
すると、歌詞の内容に引っ張られにくくなり、イメージした曲調になりやすいです。
ちなみにSunoは認識してくれるキーワードと認識してくれないキーワードがあります。 バージョンが低いと全然認識してくれなかった単語が、バージョンが上位になるにつれて認識してくれるようになったり、逆に認識されないキーワードに変更されたりとかあります。
3. どうしてもイメージ通りにならない時は
頭の中にドラムの8つ打ちがあって、徐々に盛り上がっていくような展開がほしい・・・! コード進行はヒット曲量産のマルサ進行で作りたい!って時は、音楽編集ソフトのDAWを使って、SunoAIに読み込ませるための土台となる音楽を超カンタンに作ります。
コード進行を入れたり、簡単な8つ打ちのドラムを入力してwavファイルを出力し、それをSunoに読み込ませて音楽を出力させるわけです。
コード進行やドラムを入力するのはちょっと勉強しないと難しいかもしれませんが、最近は本当に簡単に入力できるシステムがあったり、サンプルファイルを読み込むだけでそれっぽい音が作れたりするので、興味がある人はやってみてください。
DAWソフト紹介
僕が使っているDAWソフトはStudio oneですが、プラグイン読み込めるソフトならあとは好みの問題レベルです。音楽界隈で有名なソフトは以下の通りなので、検討したい方は以下のソフトから調べてみたらいいと思います。
Presonus Studio one

Steinberg Cubase
Ableton Live
Image-Line FL Studio
Logic Pro【Mac専用】

Cakewalk【無料で使える】

コメント